「捕らぬ狸の皮算用」

バブル期の不動産開発は「捕らぬ狸の皮算用」
「開発は需要を創造する」という言葉は技術開発、商品開発の世界でよく用いられる言葉ですが、その意味は従来から画期的な商品開発(技術開発)をすればそれまでなかった全く新しい需要を創造できるというものです。
これをバブル期の不動産開発でよくいわれた「(不動産)開発は需要を創造する」という言葉です。
立地(地位:じぐらい・土地が持つ本来の力)を気にしなくてもそれなりのスケールで開発をすれば需要は後から付いてくるといった意味でよく使われました。仮に具体的な言葉が使われなくともほとんどの開発はこのような風潮の中で行われてきたように思われます。実績のない二等立地であっても、勢いのある時代を背景していたため竣工(オープン)時は確かに多くの人で賑わっていました。
ただ、ここにきて、数多くの反省事例も見られるようになってきました。代表的なケースでは、お台場、汐留、代官山(東京)、六甲アイランド(商業棟)、あべの駅前再開発、神戸ポートピア(関西)等、その他数え上げればきりがないほど事例が見られるようになってきました。中には競合環境の激変やパンデミック等の原因したと思われるものもあります。パンデミックについてはもう少し様子を見たほうが良いかもしれませんが、不動産業界では経済要因だけではなく、バブル崩壊期の強硬な法規制・金融政策・税制の強化等のようなことも予測の範囲入れておくべきものであるかも知れません。
すなわち、現在みられる失速事例の大半は「甘い需要予測」、「甘い賃料設定」、「甘い利回り期待」を原因とする「捕らぬ狸の皮算用プロジェクト」のように思われます。

意思決定プロ―チャートがスカスカ 本格的なアセスメントがされていない
不動産開発は十分に長期的、広角的視点、不動産が持つ特殊性等を考察する必要がありますが、意思決定アセスメントも非常に重要な要素になると考えられます。
大きな開発でほとんどの場合事業化に向けてマーケティングが実施されますが、内容は基本計画が適切かどうかを検討するものではなく、まず事業計画ありきで、実際にマーケティングアセスメントが実施されるのは事後的に基本計画を実際の市場に合わせるにはどのようにすべきかといった内容がほとんどであったように思われます。(深層は不明)
すなわち、基本構想段階で立地的に最有効使用との整合、長期的市場性に適合にしたものであるかどうかをアセスメントすることはめったになかったように思われます。(深層は不明)
仮に、あったとしても誰かキーマンの号令を基に担当者個人や担当部署内の限られた情報や思い込みをベースにしたものが殆どではないかと思われます。以後何度かの会議を経て雪だるま式に話が大きくなっていくことになりますが、話が大きくなると(既成事実化)と本格的なマーケティングアセスメントを実施したとしてもこれを所与の案件とするものが大半で、見直す(NOをつける)ことはめったにないというのが実情のようです。
(金融機関、施設計事務所、ジェネコン、コンサルティング、広告代理店その他云々)。

不動産開発と一般商品(技術)開発とは似て非なるもの
不動産開発には長期的視野、不動産的視野が必要
一般技術(財)開発と不動産開発は似て非なるものであり、これを同様に論じることに無理(嘘)があり上記のような失敗を繰り返すことになります。
〇一般技術開発・・・・テーマに関する情報量が豊富で専門家も多い
〇不動産開発・・・・・非常に長期的な視点が必要で、限定された地域(市場)の豊富な情報がない、及び、不動産専門家が少ない(大半は一般学部卒)。
※不動産開発に伴う事業資金の返済期間は20~50年ですが、キャッシュフローだけみてもこれ以上のスパンを前提に取り組む必要があると思われます。その他不動産特有の判断基準もありますが・・・・。
不動産開発と一般技術開発とは似て非なるの
一般に技術開発分野ではニーズ(市場性)若しくはシーズ(技術的可能性)及び競合性等の面から幾度もテーマ評価会議を経て順次進められて行くと認識しておりますが、概ね初期に出されたテーマ(アイデア)数に対し3%程度が生き残るようです。さらに事業化(商品化)されるのはその数分の1と聞いています。
不動産開発も同じようにとは行きませんが、もう少し慎重な取り組みがあっても良いのではないかと思われます。

これからの不動産開発
今後長期にわたり日本経済が安定成長すると見られるなか、住宅・不動産開発も本来の特性を十分認識した上でリアルな目線、長期的な目線から開発を見直してゆく必要があると思われます。
不動産開発マーケター


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「捕らぬ狸の皮算用」” に対して2件のコメントがあります。

  1. bvc111 より:

    よろしくお願い申し上げます

  2. 道浦峰行 より:

    いつもお世話になります

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